2024/08/30
カウンセリングとコーチングの違いとは?それぞれどのような特徴がある?
カウンセリングとは
カウンセリングの定義
カウンセリングとは、日本で大きくカウンセリングに影響を与えた国分康孝によると「カウンセリングとは言語的および非言語的コミュニケーションを通して、健常者の行動変容を試みる人間関係である」としています。病理的なパーソナリティ変容を狙うのはサイコセラピーであり、カウンセリングは問題を抱えた健常者を対象とします。わかりやすく表現すると精神、心理的な問題や感情の整理を目的とした対話形式の対人支援と言えます。カウンセラーはクライアントが自己理解を深め、問題を解決する手助けをします。過去の経験や感情に焦点を当て、現在の問題の根本原因を探り、解決策を見つけるプロセスです。
カウンセリングの手法とアプローチ
カウンセリングで用いられる具体的なアプローチとして明治大学の諸富祥彦によると以下のものがあります。ロジャーズのクライアント中心療法からきている気付きと学びのアプローチが主流となっています。
気付きと学びのアプローチ(自己成長論的立場)
マズローの自己実現論、パールズのゲシュタルト・セラビー。フランクルのロゴセラピー。ジェンドリンのフォーカシング。ロジャースのクライアント中心療法など。
練習するアプローチ(認知行動論立場)
アイゼンクなどによる学習理論をもとにした行動療法。レスポンス条件づけでパブロフの犬。ソーンダイクによるオペラント条件づけ。ベックの認知行動療法。アルバートエリスの論理療法。ABCDE理論など。
過去から解放されるアプローチ(精神力動的立場)
フロイトを中心とする精神分析。
カウンセリングで主に用いられる技法/スキルはどのアプローチによるかによって異なりますが、以下のものがあります。
- 傾聴:クライアントの話をじっくりと聞き、受容、共感的理解、自己一致をすることで信頼関係を築きます。
- 認知行動療法(CBT):クライアントの思考パターンを変えることで、行動や感情を改善します。
- 精神分析:無意識の中にある過去の経験や感情を探り、現状の問題との関連性を明らかにします。
カウンセリングの効果と適用例
カウンセリングは以下のような状況で有効です。
- 問題や課題の解決:精神、心理的な問題を抱えている場合に効果的です。
- 自己理解の深化:自分の感情や行動パターンを理解し、生活の質を向上させるために役立ちます。
- 人間的成長:自他の受容や信頼性を得、問題や生き方のへ積極性など行動を変えるために役立ちます。
- トラウマ:過去の辛い経験を整理し、乗り越えるためのサポート。
コーチングとは
コーチングの定義
コーチングとは、東京コーチング協会では、「コーチングとは、コーチがクライアントの想いや考えに働きかけることにより、クライアントが一人では気づけなかった心から望んでいることに気づき、その実現に向けて自発的に行動し成長するための協働行為である。」と定義しています。また世界最大級のコーチング団体であるICFによると、「コーチングとは、思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くことである」、と定義しています。わかりやすく表現すると個人の目標達成や自己実現をサポートするための対話形式の対人支援といえます。未来志向で、具体的な行動計画や目標設定に焦点を当てます。コーチはクライアントが自分自身の力で目標を達成できるよう支援します。
コーチングの手法とアプローチ
コーチングで用いられる具体的なアプローチとして主に以下のものがあります。
行動コーチング
「行動が結果をもたらす」という立場で、クライアントが自身の内なる知恵と可能性を発見し、自らを活性化させることを焦点にあてたアプローチです。
GROWモデル(Goal 目標、Reality 現実、Option 選択、Will意思)
CLEARモデル(Contracting 契約、 Listening聴く、Exploring 探求、Action Design 行動デザイン、Review レビュー)
OSCARモデル(Outcome望む結果、Scalingスケーリング、Know-howノウハウ、Action行動、Review振り返り)。
認知行動コーチング
認知行動療法の原則と技法をもとにしたコーチングアプローチです。
SPACEモデル(Social 状況、Physiology 生理・身体反応、Action 行動、cognition 認知、emotions 感情)。
コーチングで主に用いられる技法/スキルは5つの基本的スキル、「傾聴」、「承認」、「質問」、「フィードバック」、「提案/リスエスト」があります。また西垣悦代のコーチング心理学概論によると聞くスキルと動かすスキルに分けることができると記述されています。
- 聞くスキル:注意して聞く、言葉の最後まで聞く、感情の反映、確認、要約、具体例を引き出す、沈黙、開かれた質問。
- 動かすスキル:探検、情報を与える、適切な自己開示、挑戦と対決、不整合、目標の設定と行動計画、励ましと賞賛、意思決定、進捗のモニタリング、ブレーンストーミング。
コーチングの効果と適用例
コーチングは以下のような状況で有効です。
- キャリアアップ:仕事での目標を達成し、キャリアを進展させるためのサポート。
- 自己啓発:個人の成長やスキルアップを目指す場合。
- リーダーシップの向上:組織内でのリーダーシップスキルを向上させる。
- チームマネジメント:多様なバックグラウンドを持つチームのマネジメントに有効です。
- 人生全般の向上:ライフのバランスを保ち、ウエルビーイングであるためのサポート。
カウンセリングとコーチングの違いについて
目的の違い
カウンセリングは主に過去の問題や感情の整理を目的とし、クライアントを本来の自分に戻すことを目指します。一方、コーチングは未来の目標達成や行動計画に焦点を当て、クライアントが実現したい目標にむけて自発的に行動し、成長することを目指します。
手法の違い
カウンセリングでは傾聴を中心にした手法が用いられ、過去のトラウマや感情に焦点を当てます。コーチングでは質問によって相手の感情や思考を刺激する手法を用いて未来志向で具体的な行動に焦点を当てます。
関係性の違い
カウンセラーの役割はアプローチによっても異なりますが、専門知識を持ち、クライアントが抱える問題について深く理解し、クライアント自身が問題を解決し、本来の状態に戻す支援をする役割を担います。一方、コーチはクライアントが自ら設定した目標にむけて、クライアント自身が答えを見つけ、行動に移せるように支援する役割を担います。
自分に合ったサービスの選び方
選び方のポイント
カウンセリングが適している場合は精神的な問題や過去のトラウマを抱えている場合です。コーチングが適している場合は具体的な目標達成や自己実現を目指している場合です。
まとめ
カウンセリングとコーチングの違いを再確認し、自分に合ったサービスを選ぶ必要があります。これにより、ユーザーは自身のニーズに最も適したサービスを選ぶことで、より良い成果を得ることができます。
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執筆者:桐井 久美子
詳しいプロフィールはこちら
桐井 久美子
Kirii Kumiko
- 資格
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- 東京コーチング協会認定プロフェッショナルコーチ(TCAPC)
- 国際コーチング連盟プロフェッショナルコーチ(PCC)
- 国家資格キャリコンサルタント
- 産業カウンセラー
- MBTI認定ユーザー