2024/08/30
メンタリングとコーチングの違いと効果について解説
今日の世界では、キャリアやライフスタイルがかつてないほど多様化し、個人が直面する課題も複雑化しています。これに対し、組織もまた、急速な環境変化に対応し、社員の能力を最大限に引き出すことが求められています。このような環境では、従来の一律的な教育や指導だけでは十分ではありません。個々のニーズや状況に応じて、適切なアドバイスやサポートを提供し、自己理解や自己実現を促進することが不可欠です。
このように、メンタリングとコーチングは、現代の多様で複雑な環境において、個人と組織の両方が効果的に成長し、目標を達成するための不可欠なツールとなっています。この記事では、これらの手法の違いや効果、そして実践方法について詳しく解説し、誰もが最適な方法を選択できるようにサポートします。
メンタリングとは
メンタリングの定義
メンタリングとは、経験豊富なメンターがメンティーを長期的に指導し、彼らの成長をサポートする手法です。メンターは通常、同じ業界や職種で豊富な経験を持っており、キャリアアドバイスや業界特有の知識を提供します。
メンタリングの目的
• 知識とスキルの移転:メンターの豊富な経験と知識を通じて、メンティーが業界特有のスキルや実務知識を習得することを目的とします。
• キャリアの方向性の明確化:メンターの指導を通じて、メンティーが自身のキャリアゴールを明確にし、それに向けた具体的なアクションプランを立てることを目指します。
• 個人的な成長の促進:メンタリングは、メンティーの自己理解を深め、自己の強みや弱みを認識し、それを基にした成長を促進します。
• ネットワーキングの強化:メンターの人脈や業界内でのつながりを活用し、メンティーのネットワークを拡大し、将来のキャリア機会を増やすことが目的です。
このように、メンタリングの目的は、メンティーの専門的成長とキャリア発展を長期的に支援することにあります。メンタリングを通じて、メンティーは自身のキャリアにおいて重要なスキルや知識を身につけ、目指す目標に向けた道筋を明確にすることができます。
メンタリングの効果
• 継続的な成長支援:長期的な視点でメンティーの成長を支えることで、短期間では得られない深い洞察や持続的なスキルアップが可能になります。
• キャリアの加速:メンターの指導により、メンティーはより迅速にキャリアを進めることができ、その領域での影響力や信頼が向上します。
• 自己効力感の向上:メンターのフィードバックとサポートにより、メンティーは自己効力感を高め、自信を持って課題に取り組むことができます。
• 成功パターンの学習:メンターの経験から成功するためのベストプラクティスを学ぶことで、メンティーは同様の成功を再現しやすくなります。
このように、メンターの指導により、メンティーは迅速にキャリアを進展させ、職場での影響力を強化し、自己効力感を高めることができます。また、メンターの成功体験から学ぶことで、メンティーは成功パターンを習得し、同様の成果を再現する能力を身につけます。
メンタリングの具体的な実施方法
1. オリエンテーションとマッチング
企業や組織がメンタリングプログラムを導入する際、オリエンテーションを実施し、メンターとメンティーの役割や期待を明確にします。その後、業界経験やキャリア目標などを考慮してメンターとメンティーのマッチングが行われます。個人的にメンターをつける場合、メンティー自身が信頼できる先輩や専門家に直接アプローチし、メンターを依頼することが一般的です。
2. 信頼関係の構築
メンターとメンティーは、最初の段階で信頼関係を築くことが重要です。これには、初期の段階でお互いの期待、目標、コミュニケーションの頻度や方法について合意を形成することが含まれます。個人的なメンタリングでは、よりカジュアルでフレキシブルなアプローチが取られることが多いですが、信頼関係の構築が成功の鍵となります。
3. 定期的な対話とフィードバック
メンタリングは、定期的な1対1の対話を通じて行われます。企業のプログラムでは月に1回から数回のセッションが設けられることが多いですが、個人的なメンタリングでは、双方の都合に合わせて柔軟にセッションが設定されることが一般的です。これにより、メンティーは進捗状況や直面している課題についてフィードバックを受けることができます。
4. 目標設定と進捗管理
メンタリングの初期段階で、メンティーのキャリアや成長に関する具体的な目標を設定します。これらの目標は定期的に見直され、進捗が評価されます。個人的なメンタリングでは、目標設定がより柔軟で、メンティーの個々のニーズに応じたものとなります。
5. スキル開発とキャリアガイダンス
メンターはメンティーに対して、キャリアに関連するスキルの開発や知識の提供を行います。これには、業界特有の知識やスキルの習得、リーダーシップの向上、ネットワーキングの支援などが含まれます。個人的なメンタリングでは、メンティーが抱える具体的な課題に対するアドバイスや指導がよりパーソナライズされる傾向があります。
6. 評価と振り返り
メンタリングの過程で、定期的にプログラム全体の評価が行われます。メンティーの成長や目標達成度の評価、メンターとメンティーの関係性の質に関するフィードバックが含まれます。個人的なメンタリングでは、これまでの成果を振り返りながら、メンティーが今後どのように成長を続けるかについてカジュアルに話し合うことが多いです。
7. プログラムの終了と継続的なサポート
メンタリングプログラムが正式に終了するときには、メンティーの達成を共に祝い、その成果を振り返ります。その後も、メンターとメンティーが希望すれば関係を続けることが多く、メンターは長期にわたってメンティーのサポーターとして関わり続けます。
メンタリングが長期にわたるのは、メンティーの成長やキャリア形成を全面的にサポートするためです。メンターは、メンティーが様々な経験や挑戦を通じて学び、スキルや知識を深めていくプロセスを支援します。この成長は短期間で達成されるものではなく、時間をかけて少しずつ積み上げていく必要があります。メンタリングでは、メンティーが長期的なビジョンを描き、その目標に向かって段階的に成長する過程を支援します。メンティーが経験を積み重ねる中で、メンターの助言とサポートを受け続けることで、深い洞察と持続的なスキルアップが実現できるため、メンタリングは通常、長期的な取り組みとなるのです。
コーチングとは
東京コーチング協会(TCA)によるコーチングの定義
「コーチングとは、コーチがクライアントの想いや考えに働きかけることにより、クライアントが一人では気づけなかった心から望んでいることに気づき、その実現に向けて自発的に行動し成長するための協働行為である。」
コーチングとは、コーチがクライアントの考えや感情に寄り添い、対話を通じてクライアントが本当に望んでいることに気づいていくプロセスです。クライアントはその気づきを元に、自分のありたい姿に向けた行動を起こし、成長していきます。コーチングは、クライアントが自分では気づかなかった内なる願いや「ありたい姿」を発見し、それを実現するために主体的に動くことをサポートする、二人三脚のような協働作業です。
コーチングの目的
コーチングの目的は、クライアントが自己理解を深め、自分の「ありたい姿」を明確にして、それを実現することです。コーチは、クライアントがそのために必要なスキルを身につけ、具体的な行動を起こせるようにサポートします。コーチングではクライアントの課題に合わせてテーマを絞り、焦点を当てたアプローチを行います。この過程を通じて、クライアントは、自分が本当にやりたいことに近づいていきます。具体的なテーマはクライアントによって異なり、キャリアの発展、パフォーマンス向上、ライフバランスの改善、ストレス管理、人間関係の改善、自己実現など、幅広い内容を含むことができます。
コーチングの効果
コーチングの効果として、クライアントは以下の成果を得ることが期待されます:
- 深まる自己理解:コーチングの過程で、クライアントは自分の価値観や目標を再確認し、それに基づいた「ありたい姿」に気づくことで、自己理解がさらに深まります。
- 明確な目標設定:クライアントは自分の目標や優先順位を明確にし、それに向けた具体的な計画を立てることができます。
- 行動の促進:コーチのサポートを受けて、クライアントは計画を実行に移し、目標達成に向けて行動を起こすことができます。
- 自己効力感の向上:成功体験を積み重ねることで、クライアントは自己効力感を高め、自信を持って新たな挑戦に取り組むことができます。
- ストレスの軽減:ストレスの管理方法を学ぶことで、クライアントは日常生活の中でのストレスを減らし、心身の健康を向上させることができます。
- タイムマネジメントの改善:時間の使い方を最適化することで、クライアントはより多くのことを効率的に達成できるようになります。
- バランスの取れたライフスタイル:仕事とプライベートのバランスを整えることで、クライアントの全体的な幸福感が向上します。
- スキルの向上:特定の分野でのスキルアップを目指すクライアントは、コーチングを通じてそのスキルを習得し、実践に活かすことができます。
- 創造的な自己形成:コーチングを通じて、クライアントは世の中との関わりの中で新たな自分自身を創り上げていきます。これは、自己理解と行動を通じて継続的に進化する自己形成のプロセスです。
- 人間関係の強化:コミュニケーションスキルの向上を通じて、クライアントはより良い人間関係を築き、職場や家庭での協力を促進します。
このように、コーチングはクライアントが多様な目標を達成し、自己理解と行動を通じて成長し続けるための幅広いサポートを提供します。
コーチングの具体的な実施方法
コーチングの目的に基づいた具体的な実施方法を以下のように示します。クライアントの個別のテーマや目標に応じて、柔軟に対応できるプロセスを重視しています。
1. 初回セッション(導入)
- 信頼関係の構築:最初に、コーチとクライアントの間で信頼関係を築きます。お互いの期待やコーチングの目的について話し合い、クライアントが「ありたい姿」を描けるようにサポートします。
- テーマと目標の明確化:クライアントが追求したいテーマを明確にします。キャリアの発展、パフォーマンス向上、ライフバランスの改善、ストレス管理、人間関係の改善、自己実現など、幅広い目標から具体的な方向性を設定します。
2. 現状把握と自己理解の深化
- 自己認識の強化:コーチングの質問や対話を通じて、クライアントが自分の価値観、信念、強み、弱みを深く理解できるようにサポートします。この自己理解を基に、クライアントの「ありたい姿」を具体化します。
- リソースの確認:目標達成に必要なスキルやリソースを確認し、現在の状況とのギャップを特定します。
3. 行動計画とスキル開発
- 行動ステップの設定:クライアントが目標を達成するために、具体的な行動計画を立てます。これには、スキル習得、日常のルーティン改善、時間管理の工夫などが含まれます。
- スキル開発の支援:クライアントが必要なスキルを身につけられるように、学習方法や実践の場を提供する支援を行います。
4. 定期的なセッション
- 進捗確認とフィードバック:コーチとクライアントは定期的にセッションを行い、行動計画の進捗を確認します。フィードバックを通じて、クライアントが継続して自己理解を深め、行動を起こせるように支援します。
- 障害の克服:目標達成に向けたプロセスでクライアントが直面する障害や課題を特定し、それを乗り越えるための方法を共に考えます。
5. 成長の振り返りと次のステップの計画
- 自己評価:クライアントが行動の結果を振り返り、自己理解の進展や目標達成に向けた進歩を確認します。この過程での学びを整理し、次の行動につなげます。
- 次の目標設定:クライアントが新たに見つけた「ありたい姿」や、さらに深まった自己理解に基づき、次の目標を設定します。
6. 終了セッション(まとめ)
- 成果の総括:コーチング期間中に得られた成果を総括し、クライアントが今後も自己成長を続けられるような方向性を確認します。
- 将来への展望:クライアントが今後も充実した生活や仕事を実現するための道筋を描き、自己理解の深化を続けるためのアプローチを検討します。
- 継続サポートの検討:別のテーマに取り組む必要がある場合には、コーチングを継続します。必要がなければ、コーチングを終了し、クライアントが独自に成長を続けられるようサポートします。
メンタリングとコーチングの違い
1. 目的の違い
• メンタリングの目的
メンタリングの目的は、経験豊富なメンターが長期的にメンティーを支援し、キャリアや人生全般での成長を促進することです。メンターは、自身の経験や知識を活かして、メンティーが自分の道を見つけ、長期的な目標を達成できるように導きます。
• コーチングの目的
コーチングの目的は、クライアントが自己理解を深め、自分の「ありたい姿」を明確にして、それを実現することです。コーチは、クライアントがそのために必要なスキルを身につけ、具体的な行動を起こせるようにサポートします。この過程で、クライアントは本当にやりたいことに近づいていくことが目指されます。
2. アプローチの違い
• メンタリングのアプローチ
メンタリングは、メンターが自身の経験や知識を直接的に伝える形で進められます。メンターは、メンティーに対して具体的なアドバイスや指導を行い、メンティーのキャリアパスや長期的な成長をサポートします。メンタリングは、一般的に長期間にわたって行われ、メンティーがメンターの経験から学び、成長することを重視します。
• コーチングのアプローチ
コーチングは、クライアントの目標や課題に合わせてテーマを絞り、焦点を当てたアプローチを行います。コーチは、クライアントが自己理解を深め、その理解に基づいて行動できるように質問や対話を通じてサポートします。クライアントが自ら答えを見つけ、行動に移すプロセスを重視します。
3. 効果の違い
• メンタリングの効果
メンタリングの効果としては、メンティーがメンターの経験から学び、キャリアの方向性が明確になり、長期的な成長が促進されることが挙げられます。また、メンターとの関係を通じて得られるネットワークの拡大や、長期的な視野での自己成長が期待されます。
• コーチングの効果
コーチングの効果として、クライアントが自己理解を深め、自分の「ありたい姿」に近づくことができます。コーチングを通じて、クライアントは具体的な行動を起こし、目標を達成するためのスキルを身につけます。また、この過程を通じて、クライアントは持続的な成長を遂げ、充実した生活や仕事を実現する力を得ることが期待されます。
メンタリングとコーチングの導入ステップ
メンタリングの導入ステップ
1. 目的と期待の明確化
まず、メンタリングを受ける目的や期待を明確にします。これは組織内でのキャリア成長を目指す場合もあれば、個人でのスキル向上や人生の指針を得るための場合もあります。
2. メンターの選定とマッチング
組織の場合はメンターを選定し、メンティーとの適切なマッチングを行います。個人でメンターをつける場合は、自分の目標に合ったメンターを探し、自分で依頼します。業界経験や価値観が合うかどうかを基準に選びます。
3. オリエンテーションと目標設定
組織でのメンタリングでは、正式なオリエンテーションが行われることが多いですが、個人の場合は、メンターと初回のミーティングを通じて、メンタリングの目標や期待を共有し、目標設定を行います。
コーチングの導入ステップ
1. 目的と期待の確認
コーチングを受ける目的や期待を明確にします。組織内でのパフォーマンス向上を目指す場合もあれば、個人での自己理解や生活の充実を目指す場合もあります。
2. コーチの選定
組織がコーチを選定する場合もありますが、個人でコーチをつける場合は、自分の目標や課題に合ったコーチを選びます。コーチングスタイルや専門分野が自分に合っているかを確認します。
3. テーマと目標の設定
初回のセッションで、コーチと共に取り組むテーマや目標を明確にします。これは組織での目標達成に向けたものだけでなく、個人の生活やキャリアに関連するものでもあります。
まとめ
メンタリングとコーチングは、異なる目的とアプローチを持つ手法ですが、どちらも自己成長や目標達成に有効なツールです。自分の目標やニーズに応じて、どちらの手法が最適かを慎重に選ぶことが重要です。また、場合によっては両者を組み合わせることで、より効果的な結果を得ることができます。例えば、メンタリングで長期的な成長をサポートしつつ、コーチングで短期的な目標達成を支援することで、総合的な成長が期待できます。メンタリングとコーチングの違いを理解し、自分に合った方法を実践することで、より効果的な自己成長と目標達成を実現しましょう。
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執筆者:丸山 達哉
詳しいプロフィールはこちら
丸山 達哉
Maruyama Tatsuya
リードセルフ株式会社 代表取締役
- 資格
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- 東京コーチング協会マスターコーチ(TCAMC)
- 国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC)
- 国家資格キャリアコンサルタント
- 担当コース
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- 組織コーチングコース