2024/08/30
コーチングとティーチングの違いとは?効果的な指導方法の選び方
コーチングとティーチングは、個人やチームの成長をサポートするための手法です。上司として部下の育成を進めるにあたり、両者の定義や使いどころの違いを知っておけば、効果的に指導を行い、目標達成やパフォーマンス向上を実現できるはずです。
この記事では、これら二つの手法の違いを明確にし、どちらが自分やチームの状況に適しているかを詳しく解説します。
コーチングとティーチングの定義
コーチング
コーチングは、個人の自主性を尊重し、目標達成や自己実現をサポートする手法です。コーチは質問や傾聴を通じてクライアントの考えを引き出し、自己発見と成長を促します。
コーチングの根底には、クライアントがクライアントの力で仮説を立て実行できるという考え方に基づき、コーチはクライアントの思考や感情に働きかけてそれを引き出す役割を果たします。
ティーチング
ティーチングは、知識やスキルを教えることを目的とした手法です。具体的な情報や技術を伝え、学習者が問題解決方法を理解し、実践できるようにサポートするのが特徴です。特定の知識やスキルを効率よく伝達することに焦点を当てています。
コーチングとティーチングの違い
コーチング | ティーチング | |
---|---|---|
アプローチ | ・対話を通じて相手の思考や感情に働きかけるアプローチ ・コーチは質問を使い、相手が自ら仮説を立て、行動につながるようにサポートする |
・明確な指示や説明を通じて知識を伝えるアプローチ ・ティーチャーは情報の提供者として、学習者が理解しやすいように知識を体系立てて教える |
目的と目標 | ・相手が自分の在り方を見つめ、目標を達成できるようサポートを提供することが目的 ・個々の成長や自己実現を重視し、相手が自分のペースで進むことを奨励する |
・学習者が新しい知識やスキルを習得することが目的 ・特定のカリキュラムや学習目標に基づいて進行することを奨励する |
関係性 | ・対等な関係性を基盤とし、相手の自主性を尊重する ・相手とパートナーシップを築き、共に目標達成に向かって進む |
・先生と生徒の関係性に基づき、指導者が主導権を持つ。 ・ティーチャーは学習者の進捗を監督し、適切な指導を行う |
コーチングのメリットとデメリットは?
メリット
- 個人の自主性が尊重される
相手が自ら考え行動することで、自己効力感が高まります。これにより、自分の能力を信じ、自分の行動に責任を持つようになります。結果として、自己成長と問題解決能力が向上します。 - 長期的な成長を促す
コーチングは継続的な自己改善を目指すため、長期的な成果を期待できます。定期的なセッションを通じて、相手は持続的に学び、成長し続けることができます。これにより、持続可能な変化と成長が可能になります。 - 自己発見をサポートできる
コーチの質問や傾聴、フィードバックを通じて、相手は自己認識を深め、自分の行動や思考パターンを改善することができます。
デメリット
- 相手によっては目的を達せない
コーチングは相手の能力によって成果が変わってきます。例えば新卒社員に対して、「この仕事はどのように進めるのが良いと思う?」と訊くことは非現実的です。短期間で仕事を覚えてもらうためには他の方法が適しているかもしれません。 - 相手のモチベーションに依存する
相手が積極的に取り組まない場合、効果がどうしても限定的です。自身が主体的に変わろうとする意欲がなければ、コーチングのプロセスは成功しにくいため、相手の前向きな取り組み姿勢が重要です。
ティーチングのメリットとデメリットは?
メリット
- 短期間でスキルや知識を習得できる
ティーチングは具体的な知識やスキルがない場合に効果を発揮します。知識やスキルがない相手に対して情報を直接伝えるため、短期間で必要な情報やスキルを習得できます。 - 明確な指示があるため、学習者が迷わない
具体的な目標や手順が示されることが前提ですが、学習の方向性が明確になることで、迷うことなく効果的に学習できるでしょう。
デメリット
- 学習者の自主性が制限されることがある
ティーチングは一方的な情報提供になりがちで、学習者の自主性が抑制されることがあります。自分で考えたり、問題を解決する機会が少ないため、独立した学習能力が育ちにくい傾向があります。 - 一方的な情報提供になりがち
ティーチャーの指導が中心となるため、学習者の主体性が低下し、受動的な学習スタイルになりがちです。この場合、自発的な探求心や批判的思考が発展しにくく、結果的に実践的な応用力が不足することがあります。
コーチングとティーチングはどう使い分ける?
コーチングが適している場面
- 長期的なキャリアプランニング
- チームビルディングやコミュニケーションの向上
- 自己理解と自己改善の促進
- モチベーションの向上や自己効力感の強化
- リーダーシップ開発
コーチングは、特に長期的なキャリアプランニングや自己理解を深める際に非常に効果的です。チームビルディングやコミュニケーションの向上にも適しており、個々のメンバーが自分の役割を理解し、相互に信頼を築くためのサポートを行います。また、モチベーションの維持や自己効力感の強化にも役立ち、自ら考え行動することにより、持続的な成長を促します。個人の内面的な変化や自己発見を重視する場面では、コーチングが最適な選択となるでしょう。
ティーチングが適している場面
- 新入社員の教育
- 具体的なスキルや知識の習得
- 明確な手順やプロセスの伝達
- 法規制やコンプライアンスの教育
ティーチングは、新入社員の教育や法規制やコンプライアンスなど、ある程度決まりのあるものの教育に効果的です。具体的なスキルや知識を短期間で習得させることが求められる場面で、明確な手順やプロセスを教えることで、迅速に業務に適応させることが可能です。
また、特定の技術や方法論を学ぶ際にも有効です。学習者が迷うことなく進められるように、明確な指示やフィードバックを提供する場面では、ティーチングが最適と言えます。
効果的なコーチングとティーチングの手法
コーチングの具体的な手法
コーチングでは、クライアントの成長や目標達成をサポートするために、さまざまな具体的な手法が用いられます。ここでは、代表的な手法を3つ紹介します。
1.GROWモデル
GROWモデルは、Goal(目標設定)、Reality(現状認識)、Options(選択肢の検討)、Will(行動意思)の4つのステップから成り立つ成長モデルのこと。
相手が具体的な目標を設定し、現状を正確に把握した上で、さまざまな選択肢を検討し、最終的に行動計画を立てるプロセスを支援します。これにより、相手は自ら解決策を見つけ、主体的に行動できるようになります。
2.アクティブリスニング
アクティブリスニングは、クライアントの話を注意深く聴き、理解しようとする姿勢のこと。質問やリフレクションなどを用いて、クライアントの考えや感情を引き出し、深く理解することが目的です。
アクティブリスニングにより、相手は自分の思考を整理し、新たな洞察を得ることができます。コーチは相手の話を真摯に受け止めることで、信頼関係を築き、効果的なサポートを提供します。
3.フィードバック
効果的なフィードバックは、相手の成長に不可欠です。具体的かつ明確なフィードバックをタイムリーに提供し、ポジティブな点と改善点をバランスよく伝えることで、クライアントの自己認識を深め、行動の修正を促します。
フィードバックを通じて、相手は自身の強みを活かし、弱点を改善するための具体的な行動計画を立てることができます。
ティーチングの具体的な手法
ティーチングでは、学習者が効率的に知識やスキルを習得するために、さまざまな具体的な手法が用いられます。ここでは、代表的な手法を3つ紹介します。
1.ディレクト・インストラクション
ディレクト・インストラクションは、教師が具体的な知識やスキルを学習者に直接教える手法です。講義形式やデモンストレーションを通じて、学習内容を明確かつ体系的に伝えることで、学習者が迅速に理解し、実践できるようにサポートします。この手法は、学習者が初めて学ぶような新しい情報や、複雑な概念を効果的に伝える際に特に有効と言えます。
2.フィードバック
コーチングと同様、フィードバックはティーチングにおいても欠かせません。タイムリーかつ具体的なフィードバックを提供することで、学習者は自分のパフォーマンスを振り返り、必要な修正を行うことができます。これにより、学習者の成長を促進し、モチベーションを維持できるだけでなく、自信を高め、継続的な学習意欲を支えることができます。
3.実践的な演習
実践的な演習は、学習者が学んだ知識やスキルを実際に使ってみる機会を提供する手法です。例えば、セールスチームの研修で、ロールプレイを用いて実際の営業場面をシミュレーションすることが挙げられます。学習者は顧客役と営業担当役に分かれ、実際のセールスシナリオを演じることで、理論的に学んだセールステクニックを実践で試すことができ、リアルな反応やフィードバックを得ることができます。これにより、学習者は実践的なスキルが身に付き、現実の場面で応用する準備が整います。
まとめ
コーチングとティーチングはそれぞれ異なる良さがあります。メンバーやチームの状況に応じて適切な手法を選び、長期的な成長を目指すための戦略を立てましょう。コーチングとティーチングをバランスよく取り入れることで、個々のニーズに応じた効果的な指導が可能となります。
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