2025/01/31
GROWモデルを用いた効果的なマネジメント手法とは
GROWモデルは、目標達成や問題解決をサポートするためのコーチングフレームワークとして、ビジネスの現場で広く使われています。信頼関係を築きながらオープンなコミュニケーションを大切にすることで、このフレームワークを活用し、チームの目標達成を支援することが可能です。
GROWモデルとは何か?
GROWモデルは、目標達成や課題の解決を目的としたコーチング手法です。4つのステップで構成されており、それぞれが目標に向かうための具体的なプロセスを示しています。
- Goal(目標)
達成したい目的や望む結果を具体的に明確にします。「将来どうなりたいか」や「どのような成果を得たいか」を明確にすることがスタート地点となります。例えば、「半年後にTOEICで800点を取得する」など、具体的な目標設定が求められます。 - Reality(現状)
現在の状況や進捗を正確に理解します。目標との距離を把握し、必要なリソースや足りないスキルを洗い出します。現状の分析には、過去の経験や現在の課題の特定が含まれます。 - Options(選択肢)
目標達成のために取り得る選択肢や方法を考えます。これには、制約を外して多様な可能性を探ることが含まれます。例えば、リーダーシップスキルの向上が必要な場合、研修への参加や本からの学習など、いくつかの手段を挙げます。 - Will(意志)
選んだ選択肢を実行に移すための行動計画を立てます。計画には「いつ」「何を」「どのように行うか」を含め、行動に対する強い意志を確認します。この段階では、計画を実現するための具体的なステップを決めます。
このフレームワークは、シンプルでありながら、どのような課題にも適応可能な柔軟性を持っています。
GROWモデルの背景
GROWモデルは、1980年代にイギリスのジョン・ウィットモアが広めたコーチング手法です。このモデルは、目標達成や問題解決のプロセスを明確化し、シンプルなステップで進められる点が特徴です。特にビジネスや教育、個人の成長を支援する場面で広く用いられています。
このモデルの普及によって、自己成長を促すための具体的な手法として、多くの企業や個人が導入しています。
GROWモデルの優れた点は、答えを教えるのではなく、相手自身が答えを見つけられるようにサポートするところにあります。そのため、チームメンバーや部下が主体的に考え、行動する力を身につける助けとなります。このプロセスを通じて、個人と組織の成長を同時に図ることが可能です。
GROWモデルのステップごとの質問例とその重要性
GROWモデルを効果的に活用するためには、各ステップに応じた具体的な質問を行うことが重要です。質問を通じて考えを引き出し、自発的な行動を促します。それぞれのステップで適切な問いを投げかけることで、部下が自ら目標に向かって進む道筋を見つけられるようになります。
Step 1: Goal(目標設定)
目標設定は、GROWモデルの最初のステップであり、重要な出発点です。ここでは、達成したい目標を具体的に定めることが求められます。曖昧な目標ではなく、明確なゴールを設定することで、次のステップがスムーズになります。
質問例
- どのような状態になることが理想ですか?
- 達成したい具体的な結果や変化は何ですか?
- その目標を達成したとき、どのような感情を抱いていると想像しますか?
- 理想の状態にはいつまでに達成したいですか?
目標を設定する際は、SMARTの原則(具体的、測定可能、現実的、関連性がある、期限が設定されている)を活用すると効果的です。
Step 2: Reality(現状把握)
次のステップでは、現在の状況を正確に把握します。目標達成に向けての課題や、現状で利用可能なリソースを理解することが目的です。現状把握は、ゴールと現状のギャップを明確にするための重要なプロセスです。
質問例
- 現在の達成度はどの程度と考えていますか?
- 過去にどのような取り組みを行いましたか?(回答後)その結果はどうでしたか?
- 今の状況において、何が一番の課題だと感じますか?
- ゴールを達成するにあたりあなたのどのリソースが活用できるでしょうか?
現状を客観的に把握するために、具体的なデータや実例を基に話し合うことが効果的です。
Step 3: Options(選択肢)
現状と目標の間にあるギャップを埋めるために、選択肢を検討します。この段階では、できるだけ多くの可能性を挙げることがポイントです。制約にとらわれずに発想を広げることで、新しい方法が見つかる場合もあります。
質問例
- この目標に近づくために考えられる方法は何がありますか?
- どんな手段が効果的だと思いますか?
- 制約がなければ、どのような方法を試してみたいですか?
選択肢を考える際は、短期的な行動だけでなく、長期的な視点からのアプローチも検討します。
Step 4: Will(意志)
最後のステップでは、実行するための計画を具体化します。行動計画を立て、実行に向けた意思を確認することで、目標に向けた一歩を確実に踏み出せます。
質問例
- 最初に取り組む行動は何ですか?
- それをいつから始めますか?
- 計画を実行する上で、必要なサポートは何ですか?
- 計画を実行する上で、障害になりそうなことは何ですか?
- それが起きた時にどのように対応したらよいでしょうか?
GROWモデルを活用するメリット
GROWモデルを導入すると、組織内でのコミュニケーションがスムーズになり、個人やチームの生産性を向上させる手助けになります。それぞれのメリットを具体的に見ていきましょう。
主体性の高い人材の育成
GROWモデルを使うことで、部下が自分で考え、自ら行動する力を身につけやすくなります。これにより、上司の指示を待つだけの受動的な姿勢から、自主的に動けるようになる点が大きな利点です。
- 部下は問題解決に向けた具体的な方法を自分で考え出す習慣を身につけられます。
- 上司が細かく指示を出さなくても、部下が自発的に業務に取り組むようになります。
- 自主性が育まれると、部下のやる気や責任感が高まり、業務への積極的な取り組みが促進されます。
主体性を持った人材は、組織全体の柔軟性を高め、チームのパフォーマンス向上にも貢献します。
問題を具体化させる
GROWモデルを使うと、目標や課題が具体的に整理されます。曖昧な目標や漠然とした課題が明確になるため、効果的な解決策を見つけやすくなります。
- 目標達成に向けた具体的な課題が浮き彫りになり、計画が立てやすくなります。
- 現状と目標との間にあるギャップが明確になり、優先順位を正しくつけることができます。
- 問題に対して適切な解決策を選べるようになり、効率的な進行が可能になります。
課題の具体化が進むことで、無駄な手間や時間を省き、行動に集中しやすくなります。
普段の会話にも応用可能
GROWモデルは、特別な場面だけでなく、日常的なコミュニケーションの中でも活用できます。1on1やチームミーティングの際にモデルを意識して会話を進めると、対話が目的に沿ったものになり、建設的な意見交換ができます。
- 部下との対話が目標や課題に基づいて進むため、会話の内容が具体的になります。
- 定期的な1on1の場で進捗状況を確認しながら、適切なアドバイスを提供できます。
- 業務中のやり取りでもGROWモデルを意識することで、チーム全体が目標に向けて同じ方向を向くようになります。
GROWモデルを導入する際の実践的なアドバイス
GROWモデルを効果的に導入するには、部下との信頼関係を築き、オープンな対話を行うことが重要です。また、日常業務の中でこのモデルを自然に取り入れることで、部下の成長や目標達成を支援する環境を整えることができます。以下では、導入時に意識すべき具体的なポイントを紹介します。
信頼関係の構築
GROWモデルの効果を引き出すためには、部下との信頼関係が欠かせません。信頼があることで、部下は自分の考えを率直に話しやすくなり、目標に向かう意欲が高まります。
- 部下の話に真剣に耳を傾ける姿勢を示します。一方的に話すのではなく、相手の考えや気持ちを理解しようと努めることが大切です。
- 成果をしっかりと認めるだけでなく、失敗についてもオープンに共有します。成功だけでなく失敗を受け入れることで、部下は安心感を持ちます。
- 部下それぞれの性格や特性を理解し、個別に対応します。個人の強みや弱みを把握した上でアプローチを変えることで、より適切な指導が可能になります。
- 部下の話を受け止める姿勢が大切です。すぐに評価したり、心にもない誉め言葉を使わないことで信頼感が増していきます。
信頼を築くには、部下が自分の意見や考えを自由に話せる環境作りが重要です。
オープンなコミュニケーションを心掛ける
部下が自由に意見を言える環境を整えることで、GROWモデルを円滑に運用できます。否定的な態度を避け、部下の話を積極的に受け入れる姿勢を持つことが大切です。
- リラックスできる雰囲気を意識して、部下が話しやすい場を作ります。対話の中で相手を尊重する言葉を使うことがポイントです。
- 部下が話す際に言葉に詰まった場合は、適切な質問やフォローを行い、話を引き出します。質問は具体的にすることで、部下が答えやすくなります。
- 日々のやり取りを通じて、部下の悩みや不安を把握します。定期的にコミュニケーションをとることで、問題が大きくなる前に対処することができます。
こうしたコミュニケーションの積み重ねが、部下との関係を強化し、目標達成を後押しします。
研修や外部コーチを活用する
GROWモデルを効果的に導入するには、研修や専門家からの指導を取り入れることも一つの方法です。知識を深め、具体的な運用方法を学ぶことで、現場での活用がより実践的になります。
- 専門家による指導を受けることで、効果的な運用方法を学べます。コーチングの経験が浅い場合にも適した方法です。
- 研修を通じて、GROWモデルの基本的な理論や活用方法を学びます。実務にどのように適用できるかを具体的に理解することで、導入がスムーズになります。
- 外部コーチを招き、実際の事例を基にしたコーチングセッションを行います。これにより、部下へのアプローチ方法を実践的に学べます。
外部のリソースを活用することで、自分たちだけでは気づけなかった改善点や新たな視点を得られます。
GROWモデルは部下の成長と組織の成功に重要なフレームワーク
GROWモデルは、目標設定から問題解決までをサポートする効果的なフレームワークであり、部下の主体性を引き出し、組織全体の生産性を向上させるための強力なツールです。信頼関係の構築とオープンなコミュニケーションが成功の鍵となり、日常業務での実践や外部の専門家のサポートを通じて、さらに効果を高めることができます。このモデルを活用することで、部下が自ら目標に向かって進み、成果を上げる環境を整えましょう。
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