コーチは人間を学び続ける - 社会科学・自然科学では割り切れない「人間」の領域とコーチが学び続ける理由 -

こんにちは、バンコク在住の小池です。今日はAIの時代にコーチが人間を学び続ける意味とはというお話です。
人間とはどれほど合理的であろうとしても社会科学や自然科学のように割り切れる存在ではありません。
むしろ、割り切ろうとしても「こぼれてしまう」部分をたくさん持ち合わせているのが人間という存在ではないでしょうか。
人間はその時の気分や体調、経験による偏り等から自分でも驚くような判断や行動をしてしまうことがあります。
この「こぼれ落ちる部分」こそがまさに人間らしさそのものだと私は思います。

人文科学は、このこぼれ落ちる領域を扱う学問だと学生時代に、ある教授が言っていた事を思い出します。
人の感情や価値観、背景の文化、生きてきた人生への意味づけ等からの無意識の働きかけ
こうしたものは数式のようにきれいには割り切れません。

しかし、コーチが相手にするのは、まさにこの「ひとりの人間が抱える総ての部分(全体)」をそのままに受け止め、
クライアントと共に紐解き、意味づけて行く営みがコーチングではないでしょうか?
また、ヒューマンファクターの考え方では、「人は必ず間違えを犯すものだ」という前提に立ちます。
間違えることをゼロにすることではなく、間違えた時にどう向き合い、どのように成長へと変えていくかが大切なのです。
これは、コーチングの現場でも共通しているのではないでしょうか?

クライアントは迷ったり、立ち止まったり、感情に揺さぶられたりしながら答えを探し求めていきます。コーチはその揺らぎを否定せず、
丁寧に寄り添い、共に整理し、歩き出す力を引き出す役目を担っています。この点にて人間のコーチが持つ価値はとても大きいと思います。
AIは非常に優秀で、多くの情報を整理したり、論理的な助言を行ったりすることは得意です。しかし、人の心には論理では説明が出来ない部分があります。
沈黙の重さ、迷いの背景にある長い人生の文脈、声の震えから伝わる不安、言葉にならない複雑な想い等、
こうした「余白の情報」は、同じ人間だからこそ感じ取ることができるのではないかと思います。

対話の中でふっと落ちて来る気づき、場の空気が変わる瞬間、クライアントの目が輝きだす瞬間、これらはデータとして扱うにはあまりに繊細で、
人間同士であるからこそ共有できる体験です。だからこそコーチは人間とは何かを学び続ける必要があるのだと思います。
必要なのは単なる知識や技術だけではありません。人間を深く理解しようとする姿勢、自分の枠や反応を知り続けようとする自己探求、
クライアントの人生に敬意を払い、向き合う誠実さ、そして、その時その場に生まれる感情を見落とさない感性、こうしたすべての積み重ねが、
コーチとしての「人間らしさ」を支える基礎になるのではと思います。
AIが発達し続ける今だからこそ、人間同士が丁寧に向き合う価値はむしろ大きくなっているのではないかと考えます。

コーチが自ら学び「こぼれ」を抱えるクライアントに寄り添おうとする姿勢そのものが、クライアントにとっての安心であり、信頼であり、
「一緒に前へ進める」という希望につながるのだと思います。コーチングは技術でありながら、人と人が出会い共に歩む関係性の営みでもあります。
だからこそ私たちコーチはこれからも人間という割り切れない存在を理解し続ける努力を惜しまずに、コーチングの場と真摯に向き合い続けて行く事が
大切だと思います。

小池信道

小池 信道

Koike Nobumichi

東京コーチング協会 運営委員
Thai Japan Coaching Associates Co., Ltd. Founder & Director
資格
  • 東京コーチング協会認定プロフェッショナルコーチ(TCAPC)
  • 国際コーチング連盟プロフェッショナルコーチ(PCC)
\今日からできる!/ ビジネスパーソンのための組織コーチング入門 第3回 「ズレに気づく力――プロセスを捉える視点」
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