2025/05/05
あなたの視点がクライアントを創り出す~量子力学から学ぶコーチング~
皆さんも「本当の自分とは何か?」と考えたことがあるでしょう。実はこの問いには、物理学の世界からの興味深いヒントがあります。
私は若い頃から物理学に魅了され、大学でも物理学を専攻していました。古典物理学では、自然がまず存在し、それを人間が観察するという考え方が基本でした。
ところが量子力学の世界では、私たちが物体を観察しようと光を当てるだけで、その物体が変化してしまうことが明らかになりました。
観察するという行為自体が、対象に影響を与えるのです。さらには「人間が観察するからこそ宇宙が存在する」とさえ考える物理学者もいます。
量子の世界では、観察される前の素粒子は「可能性の波」のような状態です。観察することで初めて、一つの明確な性質を持つようになるのです。
これは人間に置き換えると、「誰かに観察されて初めて、自分の中の可能性が具体的な個性として現れてくる」と言えるかもしれません。
例えば、話す相手によって自分の言動や感情が変わるという経験は、誰にでもあるでしょう。一人でいる時も、私たちは常に自分自身を観察しています。
つまり、私たちは常に観察者によって創られ、変化し続けているのです。これはコーチングにも深く関係しています。
コーチがクライアントをどう観察するか、否定的に見るか肯定的に見るか、それがコーチングの質や成果に大きな影響を与えます。
コーチングとは、まさにコーチとクライアントの「共同創造」であると言えます。しかし、無理やりポジティブに見る必要はありません。
無理をするとその不自然さが相手に伝わり、むしろ悪影響を与えてしまうでしょう。
大切なのは、コーチ自身がどのような状態でいるのか、どのように自分を観察しているのかということです。
そのコーチの状態こそが、クライアントとの関係性の中で新しい可能性を創り出すのです。最近ではAIによるコーチングも注目されています。
AIは確かに優れていますが、基本的にはクライアント自身が入力した言葉や行動を分析し、それに合わせた反応をします。
一方、生身のコーチはクライアント自身が想像もしなかったような視点や感覚を与えてくれます。
例えば、慰めを求めていたのに、あえて厳しい言葉をかけられることもあるでしょう。それは、コーチがクライアント自身の想像を超えた何かを感じ取っているからです。
コーチに観察されることで、私たちは自分の中にある限界や可能性に気づき、新たな自分を創造していきます。完全な自己理解というものは、おそらく存在しません。
他人と関わることで、私たちは常に新しい自己を創り出していくのです。
物理学を学んでいたかつての私は、「他者とは独立した自分が存在する」と考えていました。
しかし今は「関係性の中にこそ自分が存在する」という視点に変わりました。
人は他人との関わりの中で、自分の人生をクリエイトしていきます。
そのプロセスをサポートすることが、コーチングの本質なのだと私は考えています。
皆さんが自分自身をどう観察するか、そしてコーチとしてクライアントをどう観察するか。それがコーチングの可能性を大きく左右するのです。
それはつまり、「クライアントには無限に可能性がある」ということです。
丸山達哉

丸山 達哉
Maruyama Tatsuya
リードセルフ株式会社 代表取締役
- 資格
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- 東京コーチング協会マスターコーチ(TCAMC)
- 国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC)
- 国家資格キャリアコンサルタント
- 担当コース
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- ビジネスコーチング・アドバンス
- 組織コーチングコース